【おすすめ紹介】ノーベル文学賞受賞|日本語で読めるハンガン作品

韓国の本

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ハンガンさんの作品、どんなものがあるの?

本日はそのようなお悩みを解消していきたいと思います。

2024年、アジア人女性で初めてノーベル文学賞を受賞したハンガンさん。

ノーベル文学賞受賞をきっかけに、ハンガンさんの作品を読んでみようかな?と
思った方は多いのではないでしょうか。

ありがたいことに、現在はたくさんの作品が日本語でも読めるようになっています。

そこで、本日はハンガン作品を愛する一人として、それぞれの作品を読んだ読者として
日本語で読めるハンガン作品をご紹介していきたいと思います。

当記事はこんな方におすすめ!
・ハンガンさんの作品を読んでみたい
・ハンガンさんの作品のおすすめやあらすじを知りたい。


ノーベル文学賞受賞 ハンガン

1970年生まれのハンガンさんですが、生まれは韓国の光州です。

光州といえば、後ほどご紹介もしますが『少年がくる』(소년이 온다)で題材となっている
1980年、光州事件が起きた場所でもあります。

1994年に文壇デビューして以来、韓国国内の様々な文学賞を受賞されています。

ハンガン作品は、差別・偏見・社会的慣習・暴力・命など
心に静かに、それでいて重く訴えかけるテーマが多く、
こまやかな人物描写や、状況描写を通して、読者の想像を掻き立てる作品ではないかと思います。


日本語で読めるハンガン作品 発行時期

2025年10月時点で日本語に翻訳されて、日本国内で発行されているハンガンさんの本は
以下の通りになります。

韓国での発行の順番とは少々異なります。

日本語タイトル日本での発行年韓国での発行年
『菜食主義者』2011年2007年
『少年が来る』2016年2014年
『ギリシャ語の時間』2017年2011年
『そっと 静かに』2018年2007年
『回復する人間』2019年2012年
『引き出しに夕方をしまっておいた』2022年2013年
『すべての、白いものたちの』2023年2016年
『別れを告げない』2024年2021年



日本語で読めるハンガン作品 おすすめ

『菜食主義者』(きむふな 訳)クオン

2011年に邦訳版が発売された『菜食主義者』。原題は『채식주의자』です。
日本で初めて邦訳されたハンガン作品です。

この作品は2016年に英語ではない原作を英訳したものを対象とした
国際ブッカー賞を受賞しています。

作品紹介
主人公の女性ヨンヘがある日突然「肉」を食べなくなり、植物になることを夢見ます。
周りはやせ細っていく彼女に肉を食べるように勧め、それに対してヨンヘは肉食を拒みます。その様子を夫や姉、義理の兄などの視点から描いており、彼女が肉を拒むことを通して、暗に暴力や支配に対して反抗の姿勢を描く物語となっています。


作品の背景にあるのは、ジェンダー格差・家父長制と言われています。

韓国はOECD諸国の中でも男女間の賃金格差が最も大きく、男性に比べ女性の経済状況は非常に不安定であると言えます。2021年の韓国における男女間の賃金格差は、31.1%を記録しました

https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4292


家父長制も強く、父親が絶対的存在とされる文化もあり、
父親が手を付けるまで食べない、女性と子どもとは別のテーブルで食べる、といったことも
昔はあったようです。

『菜食主義者』では、ヨンヘが肉を食べろという父親に抵抗する姿を通して
そんな家父長制への抵抗が描かれています。

おすすめポイント
・ハンガン作品の代表的な一冊であり、初めて邦訳された作品
・日本の社会と重ねて共感・想像しながら読むことができる


『少年が来る』(井出俊作 訳)クオン

2016年に邦訳版が発売された『少年が来る』。原題は『소년이 온다』です。
1980年に韓国・光州で起きた光州事件を題材とした内容となっています。

作品紹介
光州事件を背景に、少年ドンホと彼を取り巻く人々によって話は進みます。国家への抗議運動による混乱の中で、ドンホは遺体を管理するボランティアとして働いています。
第一章から第六章までの構成となっており、光州事件さなかの話、ドンホの死後の話も描かれています。事件当時の生々しい描写や、過去を振り返った時の古傷の描写が鮮明で、光州事件が韓国にとってどれほど苦しい歴史であったかを考えさせられる作品となっています。


光州事件は、民主化を訴える一般市民と当時の全斗煥(チョン・ドゥンファ)率いる
軍事政権の抗争です。

1980年5月17日に全斗煥が〈非常戒厳令〉を出したことをきっかけに、市民らが反発し
1980年5月18日~27日まで軍事政権vs市民の武力による抗争が起きました。
それにより、多くに死傷者が犠牲となった事件、かつ民主化につながるきっかけとなった事件です。

そういった歴史的背景を知ったうえでこの本を読むと、より内容理解が深まると思います。

おすすめポイント
・現在の韓国の民主化に大きな影響を与えた光州事件について、その壮絶な当時の状況と、取り巻く人間の心情描写を通して知ることができる。


『ギリシャ語の時間』(斎藤真理子 訳)晶文社

2017年に邦訳版が発売された『ギリシャ語の時間』。原題は『희랍어 시간』です。

ハンガンさん作品の特徴のようにも感じますが、この作品も群像小説のように描かれる時間と視点の構造の把握がやや難しい作品で、全体構造を意識しながら読むことをお勧めします。

作品紹介
言葉を失った女性と、彼女に古典ギリシャ語を教える視力が失われていく男性教師の話です。「失う」「失った」二人の交流を通して、喪失の中から他者とつながることで徐々に動き出していく様子が印象的な作品です。


『少年が来る』のような暗闇だけではなく、温かさも感じられる作品ですが、
個人的にはハンガン作品の中では、構造の複雑さ・哲学的要素なども相まって、読解の難易度が高めだと感じます。

おすすめポイント
・複雑な構造かつ抽象度も高いハンガンさんの世界観に触れられる。
・とある歴史的事件などを題材として扱っているわけではないため、暴力的な描写は少なめ。


『そっと 静かに』(古川綾子 訳)クオン

2018年に出版された『そっと 静かに』。原題は『가만가만 부르는 노래』です。
本書はエッセイ集です。
韓国では2007年に出版されています。

こちらは「歌」がテーマとなっているエッセイで、ハンガンさんが幼少期から現在に至るまでに
出会ったさまざまな曲とともに当時の記憶や感情などが美しい文章で描かれています。

他の作品を読んでいて、ハンガンさんと歌が結びつくイメージがありませんでしたが
歌を通してハンガンさんの世界観に触れることができる作品です。

おすすめポイント
・ハンガンさんのエッセイ。物語ではなくハンガンさんの人柄や人生に触れてみたいという方におすすめ。


『回復する人間』(斎藤真理子 訳)白水社

2019年に邦訳版が発売された『回復する人間』。原題は『노랑무늬영원』です。
こちらは短編集になります。

原題は『노랑무늬영원』で、邦訳版と大きく異なります。

訳者のあとがきによると、短編集の中の一つ「火とかげ」の原題が『노랑무늬영원』にあたり、原書ではそちらが本のタイトルとされています。
ハンガンさんが初版刊行時に「回復する人間」をタイトルにしたかったと語っていたことなどから、邦訳版では『回復する人間』にしたとのことです。

作品紹介
心や体に傷を負った人々が、さまざまな感情を抱きながらも回復していく様子や、回復の兆しを求めていく様子が描かれた短編集です。(中には物語上では回復の兆しがないまま終わる作品も)
ハンガンさん特有の静かに力強く動いていく話が7篇おさめられています。


個人的には、ハンガンさんの世界観をはじめて味わってみたいという方には、短編小説でもあるこの『回復する人間』をおすすめしたいです。
長編小説はその複雑性から初めて読むには物語を咀嚼しきれない可能性が高いと感じるためです。

おすすめポイント
・短編集であるため、ハンガンさんの作品の中では物語をきちんと理解しながら読み進めやすい作品


『引き出しに夕方をしまっておいた』(きむふな・斎藤真理子 訳)クオン

2022年に発売された『引き出しに夕方をしまっておいた』。原題は『서랍에 저녁을 넣어 두었다』です。
こちらは詩集になります。

詩集ということもあり、個人的には小説よりも読み解くのが少し難しく思います。
しかし、訳者あとがきをたまに捲って理解を助けながら、また詩に戻ったり、行き来しながら読み進めていくのも楽しみの一つかと思います。

おすすめポイント
・詩を読むことに慣れている方や、ハンガンさんの詩の世界に触れたい方。


『すべての、白いものたちの』(斎藤真理子 訳)河出書房新社

2023年に邦訳版が発売された『すべての、白いものたちの』。原題は『』です。

文庫本にもなっている一冊で、こちらは第一章から第三章までの構成でなる一つの物語ですが
どこか詩的な、エッセイのような文章で綴られている作品になります。

作品紹介
子どもを早産で亡くした母親、その後生まれた次女(私)。出会うことのできなかった姉に対する妹の思いや、生きることのできなかった姉が妹の生を通して生きる姿が印象的な作品です。
第一章は妹の視点、第二章は姉の視点、第三章ではそれまでの二章を経て再び妹の視点で姉に向き合う姿が描かれています。


こちらも素直に読んでいくと構造理解がやや難しい作品ではありますが、斎藤真理子さんの補足と、平野啓一郎さんの解説を読むことで理解が促される作品なのかなと思います。
平野さんの解説は、この作品とハンガンさんの他作品とのつながりにも触れられていて、点と点がつながる感覚も味わうことができます。

短めの作品ではあるため、気軽に手に取りやすい一冊です。

おすすめポイント
・文庫本があるため、手に取りやすい。
・一つ一つの話が短いため、ハンガンさんの静かで力強い文章をテンポよく味わうことができる。


『別れを告げない』(斎藤真理子 訳)白水社

2024年に邦訳版が発売された『別れを告げない』。原題は『작별하지 않는다』です。

こちらは、済州島四・三事件を題材としており、『少年が来る』のような
歴史的事件の卑劣さ残酷さが描かれた作品になっています。

作品紹介
主人公で作家のギョンハが、済州島四・三事件を経験した、友人インソクの母親の過去に触れていくかたちで物語は進みます。インソクの母親はこの事件で家族を亡くし、家族の死の真相を追い求めていきますが、その過程で描かれる済州島四・三事件当時の壮絶で残酷なシーンは心が抉られるような描写で、静かな文章でありながらもその悲劇に衝撃を受けざるを得ない作品です。


済州島四・三事件は、1948年4月3日に韓国・済州島で発生した民衆蜂起と、
それに対する政府軍・警察の弾圧によって多数の民間人が犠牲となった事件です。

朝鮮半島は南側をアメリカ(李承晩)、北側をロシア(金日成)が配下としていた時代で、
済州島は南北統一を訴えるデモを起こし、それに対し警察が鎮圧に動いていたというのが事件の背景にあります。

こちらの作品も語られる時代の構造が複雑に入れ替わるため、全体感を意識しながら読み進めていくことをおすすめします。

おすすめポイント
・ハンガンさんの静かな文章の中から生み出される物語を通して、歴史的事件である済州島四・三事件の悲惨な状況を知ることができる。




本日はノーベル文学賞を受賞したハンガンさんの作品について、一挙にご紹介しました。
これから読んでみたい、という方の参考となれば幸いです。

それでは、また次の記事で。감사합니다~🍀

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